昨年の戦いを通して、チームのキーワードになった『熱量』。
それらを漲らせた戦いの数々は、勝ちへの執着として表現され、スタジアムの熱狂を生んだ。
今シーズンのWE ARE GAMBA OSAKAは、その『熱量』の裏で、選手それぞれが宿すスピリットにスポットをあてる。彼らの魂は、熱意、勇気、決意は、どんな力を今シーズンのチームに与えてくれるのだろうか。

　ガンバ大阪のため、チームメイトやスタッフのため、クラブで働く人たちのため。そしてその全ての家族のために。支え、応援してもらっていることへの恩を返したいという思いが、いつもイッサム ジェバリのど真ん中にあるスピリットだという。それは自然と彼のピッチでの情熱、モチベーションに変わっている。
「いろんな人たちが繋いでくれた歴史のおかげで我々は今、ガンバ大阪の一員としてユニフォームを纏い、クラブを代表して戦う機会を与えられています。いろんな方たちの尽力、支え、サポートがあって素晴らしい雰囲気のもとで試合を戦えています。サポーターの皆さんには、ホームゲームのみならず、アウェイ戦も何時間もかけてスタジアムに足を運んでもらい共に戦ってもらっています。その全ての人たちに、自分のパフォーマンスを通して、愛を届けることがプロサッカー選手としての使命でもあると考えています」
　そのために、自分自身に常に高い要求を突きつけることも忘れてはいない。それがプロアスリートを名乗る責任だと考えているからだ。
「もちろんFWである以上、ゴールを取ることも僕に課せられた仕事だと考えていますが、何より大事なのは最高のパフォーマンスをピッチで表現するための準備を怠らないことだと思っています。その点において言えば、ここまでキャンプを含めたプレシーズンを通していいコンディションを作れていますし、開幕後もいい過程を過ごせています。もちろんそれだけの準備をしても一昨年、昨年のようにケガに苦しめられることもある世界ですが、少なからず今シーズンはケガなく自分のリズムを見出せています。その事実は、より自分らしさをプレーで表現することにも繋がっています」
　加えていうならば、日本でのプレーも3シーズン目に突入し、サッカーや生活に体が順応し始めたことも今のパフォーマンスを支える要素だろう。「いろんなことがうまく回り始めた」感覚もあるという。
「母国・チュニジアと日本では8時間の時差があります。それによる体の変化は当然ありますし、食べ物が変わるということは体づくりにも影響します。当初はピッチの芝の質の違い、グラウンドの硬さにプレーを適応させることにも少し時間を要しました。また、ようやく慣れ始めたところで昨年のように膝を痛め、積み上げてきたものが振り出しに戻ってしまうこともありました。そうした時期を乗り越え、今年は過去の2シーズンを経験値にしながら、体もプレーも適応できているように感じます。何より、私はこれまでの時間を通して、ガンバというクラブを、ホームタウンでの暮らし、街をとても気に入っています。本当の意味で、ここが『家』だと思えています。サポーターの皆さんがスタジアムに作り上げる雰囲気も大好きですし、SNSを通して知る皆さんのリスペクトのある…日本語でいう『イジリ？』や笑いのセンスもとても好きです(笑)。そうした交流によって皆さんの存在を近くに感じられていることも僕のガンバへの想いをより強いものにしているのかもしれません」
　ジェバリによれば、日本での暮らしは、母国・チュニジアの日常と似て通ずるところが多いという。人の温もり、時間の流れ方、地元のパン屋や魚屋、スーパーでのちょっとした会話など、感情豊かに過ごせる日々が、心をとても穏やかにしてくれている、と。と同時に、そうした交流を通して感じるホームタウンからの声援もまた、その胸にあるスピリットにさらなる火を灯している。


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高村美砂●文　text by Takamura Misa

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